コラム

離婚事件では、調停前置主義がとられていて、原則として訴えを提起する前に、家庭裁判所において離婚調停を経る必要があります。 

調停前置主義とは、家事調停事項(家事事件手続法第244条)について、人事訴訟や民事訴訟で訴えを提起しようとする者は、まず事前に家庭裁判所に家事調停の申し立てをしなければならないことをいいます(家事事件手続法第257条第1項)。当事者間で、話し合いによる解決の努力をした上でないと、判決を得ることはできないとの趣旨です。

家事調停の申し立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で事件を家事調停に付さなければらならないとされています(家事事件手続法第257条第2項本文)。

ただし、例外も認められており、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと判断された場合には、この限りではありません(家事事件手続法第257条第2項但書)。 

具体的には、相手方が死亡していたり、行方不明であったり、強度の精神障害があり調停能力を欠くときなど、相手方との合意が事実上不可能な場合などが考えられます。

単に相手方が話し合いに応じないとか、調停に出頭しないと言っているだけでは、この例外には当たらないでしょう。やはり、この場合には、離婚調停から手続きを進めるべきでしょう。

休業損害とは、交通事故によって傷害等を負い仕事を休まざるを得なかった場合に、交通事故による休業がなければ得ることができたはずの収入等のことをいい、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できます。

休業損害を請求できる期間は、交通事故による受傷から、傷害が治癒して仕事に復帰できるまでの間です。後遺症がある場合は、症状固定までの間は休業損害の問題となり、症状固定後は、休業損害ではなく、逸失利益の問題となります。

具体的な休業損害の金額の算定の方法は、自賠責保険基準は1日当たり5700円とされていますが、裁判での基準は、1日当たりの基礎収入に休業日数を乗じて計算されます(休業損害=1日当たりの基礎収入×休業日数)。

基本的な考え方は、上記のように簡単ですが、実際の事案においては、基礎収入の考え方、休業期間の捉え方をめぐって、保険会社と争いになることが多いです。このような場合には、交通事故の専門家である弁護士にできるだけ早く相談されることをお勧めします。

毎月1回ずつの分割払いによって元利金を返済する約定の消費貸借契約において、返済期日を単に毎月末日と定めただけで、その日が日曜日その他の休日にあたる場合の取り扱いが明定されなかった場合には、特段の事情がない限り、契約当事者間に返済日が休日であるときはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったことが推認されるものというべきであると考えられています(最判平11.3.11)。現代社会の一般的な取引慣習に準じております。

なお、民法142条には、「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。」と規定されています。

したがって、特段の合意がない限り、休日明けの営業日に返済することになります。

事例(1)借家の明渡請求事案

私は、平成18年4月に賃貸期間2年でアパートを借りて生活していました。そして、賃貸期間2年が経過したときも特に大家さんと話をすることなくそのまま継続してアパートを借りていました。すると、平成23年5月に突然大家さんから内容証明郵便で「このアパートを取り壊すから賃貸借契約の解約をする。来月までに明け渡してください。」と一方的に通知がありました。私は大家さんに従って、アパートを明け渡さないといけないのでしょうか。

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回答:

1 アパートなどの借家の賃貸借契約の期間の更新は、一般的には当事者の協議によって更新がなされますが、当事者の協議がない場合でも、貸主から更新拒絶の意思表示がなく、なんら異議申し立てがなされなければ、法律上当然に更新が認められています。その場合は、期間の定めのない賃貸借契約となります(借地借家法26条)。本件でも、更新時に何の異議もなくその後1年以上生活していることから、法定更新がなされ、期間の定めがない賃貸借契約が成立しているといえます。

2 つぎに、本件大家さんの解約申し入れの有効性が問題となります。期間の定めのない賃貸借契約は、6ヶ月前に正当事由のある解約の申入れをすると終了することができるとされています(借地借家法27条、28条)。解約の要件として、①6ヶ月前の申し入れ、②正当事由が要求されています。

  まず、本件大家さんの解約申し入れは、1ヶ月後の終了を求めていることから、期間の点で無効といえます。よって、1ヵ月後に明渡す必要はありません。ただ、正当事由があれば、6ヵ月後には明渡す必要は生じてきます。

  次に、正当事由の有無については、「建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出」などを総合的に考慮して判断されます(借地借家法28条)。賃貸人自身及び親族の使用の必要性、建物の老朽化、建物の敷地の有効利用の必要性、賃借人の使用の必要性、立退料の提供等の諸般の事情を総合的に判断して最終的には裁判所によって正当事由の有無が判断されます。

  本件の場合、大家さんはアパートの取り壊しを主張していますが、その理由がどこにあるかによって結論は変わってきます。アパートが腐食するほどに老朽化している場合には正当事由が認められやすいですが、単に大家さんの収益を改善するための建替え、有効利用が目的の場合には、それだけでは正当事由は認められません。賃借人は居住の必要性があり、一般的に弱い立場にあることが多いので、正当事由の判断において強く考慮されます。その際に、賃貸人から賃借人に立退料が提供されることが多く、その金額によって、正当事由が補完されることもあります。

  なお、立退料の算定方法については、正当事由の補完として、借家契約の内容、利用状況などを考慮して判断されますが、このように判断すべきとの法律の規定はなく、確定的な決まりがあるわけではありません。

3 また、内容証明郵便による解約の申し入れだけでは、強制的に借家の明渡しを求めることは出来ません。賃貸人は、賃借人が任意の明渡しに応じない場合には、裁判所に建物明渡しを求める裁判を提起して勝訴判決が確定しないと、強制執行をすることは出来ません。もし、賃貸人が裁判手続きを使わずに強引に明渡しや建物の取り壊しをしてきた場合には、住居侵入罪や建造物損壊罪が成立します。

4 したがって、本件の大家さんの1ヵ月後の明け渡しには応じる必要はありません。大家さんと正当事由の有無や立ち退きの補償について話し合いをして、納得のいく条件の提案があれば明渡しに応じても良いでしょう。もし、納得のいく提案がなければ、明け渡しを拒否して、裁判所の判断を仰いだ方が良いです。通常明渡請求の裁判は1年以上の時間がかかり、弁護士費用などの負担が生じることから、大家さんは一定期間の明渡しの猶予や引越しの費用の提供などに応じることが多いので、時間を掛けて交渉をした方が良いです。

わが国の刑事訴訟法において、刑事事件の処分については、検察官に公訴権が独占されています。検察官に独占的に起訴するかしないかの権限、裁量が認められています。検察官の処分の内容としては、一般的に公訴提起、略式命令請求、不起訴処分があげられます。
公訴提起は、検察官が裁判所に公判を請求する手続きです。いわゆる「起訴」です。これは、懲役刑の処分を念頭においたものです。
略式命令請求は、簡易裁判所に簡略な手続きを請求する手続きです(刑訴461条)。これは罰金又は科料の処分を念頭においたものです。
不起訴処分とは、一定の理由から、被疑者の起訴をしない手続きです。その理由として、一般的には、犯罪の証明ができないための処分として嫌疑不十分と被疑者に一定の情状が認められ今回に限り処分を猶予するための処分として起訴猶予があります。
なお、例外的な処分として、事案が極めて軽微で処罰を必要としないと判断した場合、微罪処分として警察から検察庁への送検を猶予する手続きがなされることもあります(刑訴246条但し書き、犯罪捜査規範214条)。 適正で、迅速な事件処理のため、一部の軽微な事案については検察官が司法警察職員に対してその権限を事前に指定し委任していると考えられています。

在宅捜査の一般的な捜査の流れについて、まず、警察署から検察庁に捜査書類のみが移されます(刑訴246条、いわゆる、書類送検です。被疑者逮捕のまま送検することは身柄送検といいます。)。
しばらくしたら、検察官から任意の呼び出しがなされます。そして、検察官により、任意の取調べがなされます。その後、捜査が熟した場合には、検察官により被疑者の処分がなされます。
いつまでに呼び出しがなされるか、いつまでに検察官の取調べが終了して、検察官の処分がなされるかは、明確な決まりはありません。原則として検察官の裁量となります。心配な方は、検察庁にお問い合わせいただくしかありません。
検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況一切を総合的に判断して、被疑者の処分を決定します(刑事訴訟法248条)。これを起訴便宜主義といいます。検察官の判断要素として、以上のものの他に、被疑者の自白、被害者との示談、被害感情、前科の有無等があげられます。また、当該事件の社会的な影響も考慮されます。被疑者が公務員、教師、警察官など高度な社会的品位が求められる地位にある場合は、その社会的な影響から一般の人に比べ厳しい処分がなされる傾向にあります。逆に被疑者が事件により既に社会的地位を失うなど一定の社会的制裁を受けている場合には、さらに刑事処分まで課する必要はないとのことから処分に考慮されることもあります。
 
これらの判断要素の中で、極めて重要なのは被害者との示談、被害賠償です。
わいせつ事件のような被害者が存在する個人的法益を侵害する犯罪の場合、最大の目的は被害者の保護と考えられています。それ故に、その被害者との示談が成立していて、被害が補填され、さらに被害者が宥恕し、被疑者の処分の意思がなくなれば、検察官としてもあらためて厳しい処分をする必要がないからです。
したがって、被害者との示談、被害賠償を早期に実現するためにも、弁護士に刑事弁護を依頼することをお勧めします。

事例(1)盗撮行為、迷惑防止条例違反事件
事例:相談者は、一部上場企業の社員ですが、北海道に出張している際、街中でつい出来心で携帯していたカメラで女子高校生のスカートの中を盗撮しました。これを周囲の人に見つかり、警察に突き出されてしまいました。その後留置され、検察庁において処分保留で釈放されました。相談者にはどのような犯罪が成立するのでしょうか?また、相談者は千葉県在住ですが、やはり北海道の弁護士に依頼をすべきなのでしょうか?

回答:
1.女子高校生に対する盗撮行為は、いわゆる迷惑防止条例によって禁止されています。正式には、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」といいます。この迷惑防止条例は、各都道府県に制定されています。盗撮行為については、ほぼ全ての都道府県の迷惑防止条例によって禁止されています。ただ、法定刑に微妙な違いがあります。盗撮行為は、不特定多数の人が被害に遭う可能性が高いこと、また、盗撮行為により撮影された写真等が不正に流通し、被害が拡散する恐れもあることから、その刑事責任は極めて重いと考えられています。したがって、厳格な取締りがなされており、その処罰も厳しくなる傾向にあります。
本件では北海道の迷惑防止条例が適用されます。北海道迷惑防止条例2条の2第2号では、「衣服等で覆われている身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。」が禁止されております。そして、これに違反した場合には、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」、常習性が認定され場合には、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」と規定されています。従って、本件相談者の行為は、北海道迷惑防止条例違反の犯罪となる可能性があります。

2 次に刑事処分の手続きについて、説明します。
刑事事件の捜査の手続きとしては、逮捕勾留など身柄を拘束しておこなう強制捜査と犯罪者の任意の出頭を前提にした在宅捜査の大きく分けて二つの手続きがあります(刑事訴訟法197条、198条)。いずれの手続きになるかは、捜査機関が当該事案の重大性、常習性、逃走、罪障隠滅の恐れなどを総合的に考慮して判断します。
盗撮行為の場合、被害が軽微であれば、在宅捜査になる可能性があります。ただ、常習性があると判断された場合、住所が不定の場合、前科がある場合などは、強制捜査になります。一旦在宅捜査となった場合でも、逃走したり、出頭に応じなかった場合は、逮捕され強制捜査になることがあります。 
 本件の場合、在宅捜査の扱いになっていますが、捜査機関が、相談者に前科がないこと、反省の姿勢を示していること、住所が明確であること、常習性があるとは判断できない事などの事情を考慮したものと考えられます。ただ、盗撮行為については、厳しく処罰をする傾向がありますので、今後事態の進展によっては逮捕の危険性はあります。捜査機関の出頭要請には素直に応じて捜査への協力の姿勢を示した方が良いです。

3 捜査段階での被疑者の弁護活動として重要となるのは、被害者との示談交渉です。示談が成立すれば不起訴処分となる可能性が格段に高いからです。
そこで、できるだけ早く弁護士に起訴前弁護を依頼すべきでしょう。事実上、被疑者本人又はその関係者による被害者との示談交渉は困難です。被害者は盗撮していた本人やその関係者とは会いたくないと考えるでしょうし、検察官の最終処分まで示談交渉を終了させなければならないことから検察官との交渉も必要になりますので、弁護士以外では事実上不可能です。 また、被害者の住所などの個人情報について、被害者側の意向もあり警察、検察は被疑者及びその関係者には公開しないのが原則ですが、弁護士であれば、職務上の守秘義務を前提に、少なくとも検察官は被害者の個人情報の提供に協力してもらえます。
次に、被害者との示談交渉の内容について説明します。
まず、被疑者及び被疑者の配偶者、両親などの謝罪の文書を作成して弁護人を通して被害者に提出します。
そして、被疑者の真摯な謝罪の意思を客観的かつ明確に示すために、示談金を提供します。示談金の相場としては、被疑者に経済的な制裁を課するという意味で罰金の金額くらいが相当と考えられます。一般的には30万円以上、常習の場合には50万円以上と考えられます。ただ、被害者との示談を得ることは極めて重要ですから、被害者の対応などから多少の金額の増加もやむをえないと考えます。
そして、被疑者及びその関係者が被害者及びその関係者との接触をしないことを保証するために接近禁止の誓約保証書、被害者側の情報不開示の誓約書を作成し提出します。

万が一、被害者との示談ができなかった場合は、示談交渉の経緯、示談が成立しない理由を検察官に対し説明します。そして、被疑者が作成した謝罪文等を検察官に提出して被疑者の謝罪、反省の意思を証明します。
また、被害者に示談金を受けとってもらえない場合には、代わりとして示談金の供託をする方法があります。被疑者の住所さえ判明しない場合や被害者が多数の場合には、各弁護士会や赤十字などの公共機関に贖罪寄付をするのも手段の一つです。

4 このような場合には、早めに刑事弁護に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士の選任に関して、北海道の犯罪であっても、全国のどこの弁護士会に所属している弁護士でも依頼をすることはできます。弁護士は、その職務の範囲に地域的な限定はありません。全国どこでも弁護活動ができます。
弁護士に依頼をする場合、弁護士との相談、打ち合わせ、報告連絡を密にするためにも、自分の住所に近い法律事務所の弁護士に依頼された方が便利でしょう。出張等の費用は確かにかかりますが、それはやむをえない必要経費とお考えいただいた方が合理的であると思います。

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